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HACCPってなに?概要や難しいポイントを解説

更新日:1 日前


HACCPについて、次のような疑問をお持ちではありませんか?

・HACCPの概要を知りたい

・自社での導入は義務なのか確認したい

・導入にあたって難しいポイントを押さえたい


HACCPは、食品の安全を守るために必要な衛生管理手法です。

しかし、仕組みや導入の必要性が分かりづらいのも事実。


本記事では、HACCPの概要や従来の衛生管理との違い、導入の背景、運用の難しい点まで、基本をわかりやすく解説します。

これからHACCPに取り組もうと考えている方は、ぜひ最後までご覧ください。



野口 智裕

(この記事の執筆者)

株式会社YAKUYAKUの代表。

市役所(保健所)で携わった食品衛生監視員としての経験を活かし、食品業のサポート事業を展開。


(資格)

薬剤師、JHTC認定HACCP上級コーディネーター、日本食品衛生協会HACCP普及指導員、大分県食品衛生協会HACCP普及指導員、食品表示診断士中級



目次




1.HACCP(ハサップ)ってなに?概要について



まずはHACCPの概要を解説します。


・HACCP(ハサップ)とは

・HACCPと従来の検査の違い

・HACCPは具体的に何をする?7原則・12手順について


それぞれ詳しく見ていきましょう。



1-1.HACCP(ハサップ)とは


HACCPとは、食中毒などの食品に危害を与える要因を分析し、予防するための「衛生管理手法」です。

Hazard(危害)Analysis(分析)&Critical(重要)Control(管理)Point(点)の頭文字をとった言葉で「危害分析重要管理点」と訳します。


危害分析をした後、重要な問題点はないのかという意味合いです。

1960年代にアメリカのNASAが、宇宙食の安全確保のために開発したのが起源と言われています。





1-2.HACCPと従来の検査の違い


(厚生労働省作成「ご存じですか?HACCP」より抜粋)


HACCPは従来の検査のような「最終的な検査」ではなく、製造工程の管理(予防)に重点を置きます。

従来の衛生管理は、おもに出荷可能になった食品の中から抜き取り検査を行い、基準を満たしているか確認していました。


この方法では、衛生状態が良くない食品が混在している可能性があります。

また食品事故が起きたときに、どの工程に問題があるのか検出できないのも問題でした。


一方でHACCPは原材料の受け入れから加工・出荷までの各工程で、

・微生物による汚染

・異物の混入

・化学物質の混入や汚染



などの危害を予測します。

また各工程を監視し記録することで、製品の安全性を確保できます。

これまでの抜き取り検査に比べ、より早い段階で問題の検出が可能になりました。




1-3.HACCPは具体的に何をする?7原則・12手順について


HACCPで取り組むことをざっくりまとめると、以下のとおりです。


・食品製造の工程ごとにリスクを洗い出す

・特に重要な工程(CCP)を見つけて、記録及び逸脱時に速やかな対応・記録する

・作業した内容を記録する


具体的なHACCPの運用は「7原則・12手順」を実施することとなっています。

「7原則・12手順」とは以下の内容です。


12手順

7原則

内容


HACCPチームの編成(責任者や関係者を決める)


製品の特徴の記述(使われる原材料、保存方法など)


意図する用途と消費者の確認(誰がどう使う食品か)


製造工程一覧図(フローダイアグラム)の作成


製造工程一覧図の現場確認


(1)

危害要因分析(HA:Hazard Analysis)

→ 食中毒の原因となる生物的・化学的・物理的なリスクを洗い出す


(2)

重要管理点(CCP)の決定

→ 危害を抑えるために特に重要な工程を特定(加熱・冷却など)


(3)

管理基準(CL:Critical Limit、許容限界ともいう)の設定

→ CCPで守るべき温度や時間などの基準値を決める


(4)

モニタリング方法の設定

→ 管理基準が守られているか日々チェックする方法を定める


(5)

改善措置の設定

→ 基準を外れたときにどう対応するかを決めておく


(6)

検証方法の設定

→ HACCPプランが正しく機能しているか、定期的に見直す


(7)

記録と保存

→ 実施した内容を記録し、一定期間保存する



ただし、小規模事業者(例えば、1施設に従業員が50名以内)については、「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」 も認められています。


また、その対をなす「HACCPに基づく衛生管理」は7原則を行えば基準を満たしており、HACCP導入しやすいものとなっています。

そのため、すべての事業者が厳密な12手順を行っているわけではありません。



2.2021年からHACCPは義務化!導入の経緯と対象事業者



日本では改正食品衛生法により、2020年6月1日にHACCP制度が施行され、1年間の経過措置期間を経て、2021年6月から完全義務化されました。

なぜHACCP導入を義務化したのでしょう。


ここではHACCP導入の経緯と対象事業者を説明します。

・HACCP義務化の経緯

・HACCP義務化の対象

・対象外となる事業者

・HACCPの罰則



2-1.HACCP義務化の経緯


ヨーロッパやアメリカでは20年以上前からHACCPを導入しており、インバウンド対策や少子高齢化による国内市場の縮小を背景に、日本の食品産業は海外展開が不可欠となりました。


輸出にはHACCPに基づいた衛生管理が最低条件であるため、制度化が必要でした。

また、現場の高齢化や人材不足も深刻で、従来の「経験に頼る管理」には限界がありました。


HACCPは、誰が作っても一定の品質と衛生水準を維持し、生産性を高める仕組みとして、食品業界の導入が求められるようになりました。



2-2.どんな食品事業者がHACCP義務化の対象?


HACCP制度は、食品の製造・加工・調理・販売などを行う多くの事業者に適用されます。

一方で、HACCPの導入は高いコストと労力が必要であり、個人経営の事業者では導入のハードルが高くなります。

そこで事業規模ごとに導入の基準を設けています。



HACCPの対応

一般事業者(従業員50名以上)、と畜場や食鳥処理場

HACCP7原則に基づき、事業者自ら策定・管理

小規模事業者

(従業員50名未満)

HACCPの考え方を取り入れた衛生管理


一般事業者は「HACCP7原則」に基づき、食品等事業者が自ら計画を策定し、管理する必要があります。


一方で小規模事業者は「HACCPの考えを取り入れた衛生管理」が求められます。

具体的には、各業界団体が作成した「手引書」を参考に、簡略化されたアプローチによる衛生管理を行います。





2-3.HACCP義務化の対象外となる事業者


農業、水産業の採取業はHACCP義務化の対象外です。

また「公衆衛生に影響が少ない(食品衛生上のリスクが低い)事業者」はHACCPに沿った衛生管理が不要です。


「公衆衛生に影響が少ない事業者」とは具体的に以下のような事業者です。


①食品または添加物の輸入業

②食品または添加物の貯蔵または運搬のみをする営業

③常温で長期間保存しても腐敗や品質の劣化などの恐れがない包装食品の販売業

④合成樹脂以外の器具容器包装の製造業

⑤器具容器包装の輸入又は販売業




2-4.HACCPをやらないとどうなるの?罰則について


HACCPは、2018年の食品衛生法改正により、2021年から全事業者に導入が完全義務化されました。

導入しない場合、まずは保健所などによる指導や命令が行われ、それに従わない場合は罰則の対象となります。

罰則としては、個人であれば「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」、法人には「1億円以下の罰金」が科される可能性があります。





3.HACCP導入による4つのメリット



HACCP導入は、以下4つのメリットがあります。


・品質、安全性の向上が期待できる

・従業員の衛生管理意識の向上

・企業の信用度を高められる

・生産効率の向上につながる



①品質・安全性の向上が期待できる


HACCP導入による最大のメリットは、食品の品質と安全性が向上することです。

理由は、各工程で危険要因をあらかじめ把握し、予防する仕組みを構築するからです。

また、日々の記録により、事故につながる変化にも早く気づけます。

リスクの「見える化」により、たとえ新人従業員でも理解しやすくなるでしょう。




②従業員の衛生管理意識の向上


HACCPを導入するには、社内で「HACCPチーム」を編成し、各工程の衛生管理体制を構築する必要があります。

この過程で、チームのメンバーは衛生管理に関する知識が高まります。


また、HACCPでは「リスク管理」や「記録」、問題発生時の「分析」が求められるため、より多くの従業員が衛生管理に関わることになります。

これにより、全従業員の衛生意識が向上し、組織全体で衛生管理体制を築くことができます。


なお、厚生労働省の調査によると、78.2%の経営者がHACCP導入により「社員の衛生管理に対する意識が向上した」と回答しています。





③企業の信用度を高められる


HACCPの導入により、「安全な食品を提供している」というメッセージを発信できます。そのため、消費者はもちろん、大手小売業や輸出先からの評価も高まり、取引の拡大が期待できます。

さらに、HACCP認証の取得により、優良企業としてブランド価値を高めることができます。




④生産効率の向上につながる


HACCPの導入により、作業の効率化にもつながります。

それは、導入過程で作業工程をフローダイアグラムで「見える化」するからです。

フローダイアグラム作成により、不要な作業に気づくことができ、工程の見直しが進みます。

作業内容の可視化により、従業員も動きやすくなり、生産性の向上やコスト削減につながります。




4.HACCP認証や認証機関について



HACCP認証とは、企業がHACCPによる衛生管理を適切に行っているか、第3者機関が審査する制度です。

取得は任意ですが、認証を受けると認証機関の「HACCP関連ロゴ」を使用でき、食品衛生への取り組みをアピールできます。

認証はおもに、以下の機関がおこなっています。


・地方自治体

・各種業界団体

・民間機関


ここではHACCP認証機関について、それぞれ解説します。



4-1.地域HACCP


地域HACCPは、「東京都食品衛生自主管理認証制度」「北海道HACCP自主衛生管理認証

」のように各自治体が審査を行う認証制度です。

認証の取得は比較的容易で、地域からの信頼を得やすいのが特徴です。


ただし、実施していない自治体もあるため、各自治体へ確認が必要です。

※私が住んでいる、大分県大分市では「地域HACCP」は実施されておりません。




4-2.業界団体のHACCP認証


業界団体によるHACCP認証は、

・日本食肉加工協会

・全国菓子工業組合連合会


など、各業種に特化して実施する認証制度です。

認証の適用範囲は業界内に限定され、比較的取り組みやすいのが特徴です。




4-3.民間のHACCP認証


民間のHACCP認証は、SGSやJMAQAなどの民間認証機関によって実施されます。

これらの認証では、ISO22000などの国際規格に準拠した高い基準が求められ、取得により対外的な信頼性も向上します。

特に輸出や海外取引を目指す企業にとっては、国際的な信用を得るための有効な手段となります。




5.HACCPの導入は難しい?ハードルとなる3つのポイント



初めてHACCPを導入する場合、いくつか対応が難しいハードルがあり、戸惑うことがあります。

ここでは、自社でHACCP対応を進めるうえで、特に難しいとされる3つのポイントを解説します。


①食中毒やリスク管理などの専門知識が必要

②文書作成・記録が煩雑

③現場が実践できる運用作り




5-1.食中毒やリスク管理などの専門知識が必要


HACCPに対応する場合、

・どの工程で、どんな微生物リスクがあるか

・リスクをどう制御するか


といった内容を、科学的な根拠に基づいて対処する必要があります。

こうした対応は、現場経験だけでは難しく、食品衛生などの専門知識が必要になります。




5-2.文書作成・記録が煩雑


HACCP導入には以下のような文書作成・記録作業があります。

・製品説明書、フロー図、危害要因分析表

・重要管理点(CCP)の設定と管理基準

・モニタリング計画、改善措置、記録方法など


さらに、これらを日々継続して記録する作業も必要になります。

慣れないうちは手間もかかり、現場にとって負担となる可能性があります。




5-3.現場が実践できる運用作り


HACCPは計画を立てるだけでなく、従業員が日々実践できる運用を考える必要があります。

たとえば、

・冷蔵庫の温度を毎日チェックし、記録する

・基準を外れた場合の対応をルール化する(再加熱や廃棄など)


といった運用を、現場で無理なくできる仕組みづくりが必要です。

現場への落とし込みが難しい場合は、専門家のアドバイスを受けることでスムーズに運用ができます。




6.YAKUYAKUは「HACCP」のご相談を受け付けています



YAKUYAKUは元食品衛生監視員である、私、野口が大分市にて運営している会社です。

食品衛生監視員としての経験を活かし、飲食業界の事業をサポートいたします。

当社では、HACCP導入をサポートするうえで、以下3つの強みがあります。



①専門知識|「薬剤師」や「HACCP普及指導員」として専門知識を活かした支援


微生物や化学物質、食中毒菌などに関する専門知識を有しており、科学的かつ現場に即したHACCP支援が可能です。



②行政視点×現場目線|元・食品衛生監視員だからできる実践的アドバイス


食品衛生監視員としての経験を活かして、行政側の視点と現場側の実情の両方を理解した支援を行います。



③効率化|煩雑な文書作成・記録を支援


当社では、HACCP専用の事務効率化ツールを用意しております。

クラウド管理はもちろん、イレギュラー時に当社が速やかに対応・アドバイスいたします

記録の作成・管理を効率化し、現場の作業時間を大幅に削減します。




専門性と現場目線を活かしながら、HACCPに関する幅広いご相談に対応しています。

HACCPに関するご相談は、全国どこからでも受け付けています。

「こんなこと聞いていいのかな?」と思うような内容でも大丈夫です。

お気軽に、以下方法によりご相談ください。


問い合わせフォーム

ホームページ下部のContactUsから

メール

電話

070-8949-6827



HACCPの導入は専門家(コンサルタント)へ相談を



今回の記事では、以下のポイントを解説しました。

・HACCPの概要

・HACCPのメリット

・HACCP導入の難しいポイント


 HACCPは、安全な食品を提供するうえで欠かせない衛生管理手法です。

しかし、内容が専門的であり、正しく運用するためには、知識と運用経験が求められます。

初めてのHACCP導入にあたっては、専門家への相談をおすすめします。


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