【元食品衛生監理士が解説】食品表示法の概要やルール、罰則について
- モトヒロ
- 5月3日
- 読了時間: 14分
更新日:7月2日

食品表示について以下のような悩みを抱えていないでしょうか?
・食品表示法のルールが難しくて理解できない
・調べても専門用語ばかり
・ルールに違反するとどうなるか気になる
初めて出品を考えている方にとって、ルールが複雑な食品表示。
しかし、今回の記事を読めば、食品表示法の「概要」や「ルール」が理解できます。
これから食品を販売する予定の方は、ぜひ最後までチェックしてみてください。
![]() 野口 智裕 | (この記事の執筆者) 株式会社YAKUYAKUの代表。 市役所(保健所)で携わった食品衛生監視員としての経験を活かし、食品業のサポート事業を展開。 (資格) 薬剤師、食品表示診断士中級、JHTC認定HACCP上級コーディネーター、日本食品衛生協会HACCP普及指導員、大分県食品衛生協会HACCP普及指導員 |
目次
1.食品表示法とは?抑えておきたい基本ルールと概要

1-1.食品表示法とは
食品表示のルールは、消費者庁が管轄する「食品表示法」によって規定されています。
もともとは食品表示に関するルールは、以下の3つの法律に分かれていました。
①食品衛生法
②JAS法
③健康増進法
これらが2013年に一本化され、食品表示法として統合されたことで、ルールが分かりやすく整理されました。
食品表示法の目的は、「消費者の健康を守り、安全で適切な食品の流通を促すこと」です。そしてこの法律に基づき、具体的な表示ルールを定めたものが「食品表示基準」です。
食品表示法 | 食品表示の基本原則を定めたもの |
食品表示基準 | 食品表示法に基づき、具体的な記載ルールを定めたもの |
なお、規制の対象となる食品は「加工食品」「生鮮食品」「添加物」です。
これらを販売する場合や、「不特定多数に無償で配る場合」も、表示ルールの適用を受けます。
食品を販売する際は、これらのルールを正しく理解し、適切に対応することが重要です。
参照:e-Gov法令検索「食品表示法」
参照:e-Gov法令検索「食品表示基準」
1-2.食品表示法で禁止されている表示
食品表示基準第9条では、表示してはいけない内容(禁止表示)について定められています。
具体的には、以下のような誤解を招く表示が禁止されています(一部抜粋)。
・実際より著しく優れているように見せる表現
・誤解を生むような産地名の使い方
・特定の効果を保証するような誤認表示(例:病気が治る、など)
禁止項目は全部で13項目ありますが、詳細を知りたい方は「食品表示基準 第9条」をチェックしてみてください。
参照:e-Gov法令検索「食品表示基準」
1-3.食品表示をしなくていい場合
一部のケースでは、食品表示が義務づけられていない場合もあります。
たとえば「店内で製造し販売する場合」や「包装されていない食品」などが該当します。
詳細は、以下記事で詳しく解説していますので、ご参照ください。
2.食品表示に必要な記載項目とルール

ここからは、食品表示法に基づいて必ず記載すべき項目とルールを解説します。
食品表示の項目は、大きく分けて次の3つに分類されます。
内容 | 具体的な項目 | |
品質事項 | 食品の品質情報 | 名称、原材料名、内容量、食品関連事業者 |
衛生事項 | 食品の安全性情報 | 添加物、アレルゲン、賞味・消費期限、製造所 など |
保健事項 | 健康の維持・増進 に関する情報 | 栄養成分の量および熱量 |
品質事項と衛生事項は1か所にまとめて表示します(一括表示)。
また、保健事項は栄養成分を表示し、品質事項・衛生事項と分けて記載します。
それでは、それぞれ3つの項目について、詳しく解説します。
2-1.品質事項

品質事項は、食品の品質に関する情報を記載する項目です。
ここでは、画像の表示ラベルを例に、①~④の項目を解説します。
①名称
名称は食品を指す一般的な名称を記載します。
事業者が独自につけた名称は認められません。
ただし、「フィナンシェ(まろやかフィナンシェ)」のように一般名称のあとに、カッコ書きで商品名を付け足すのは問題ありません。
②原材料名
すべての原材料を、一般的な名称で記載します。
記載する順番は、重量割合の高いものから順に記載する必要があります。
たとえば、画像のように「卵白(国産)、砂糖、バター、小麦粉…」といった形です。
また、「焼き肉のたれ」など複数の原料を使った加工品は、原材料の内訳もあわせて記載します。
加えて、原材料に占める重量割合が最も高い原材料の原産地も記載しなければなりません。国産品は「国産」、輸入品は「アメリカ」などのように原産国名を記載します。
原材料が加工品である場合は、国産であれば「国内製造」、輸入品であれば「〇〇(原産国名)製造」と記載します。
③内容量
内容量は、内容の重さ・体積・個数などを記載します。
たとえば画像では「5個」と記載しています。
このように「○○g」「○○ml」「○○個」など、適切な単位で表記する必要があります。
④食品関連事業者
表示責任者を記載します。
表示責任者とは、問い合わせに対して応答できる責任者を指します。
製造者、加工者、輸入者、販売者のいずれかの事項名をつけて、氏名および住所を記載します。
番外:遺伝子組み換え食品
画像には記載されていませんが、遺伝子組み換え食品が使われている場合は、表示に注意が必要です。
遺伝子組み換え食品とは、特定の遺伝子を他の生物に組み込む技術で作られた食品です。
たとえば、農薬を使用しなくても害虫の影響を受けにくい作物などが該当します。
日本で安全性が確認され、流通が認められているものは、以下の9品目です。
「大豆、とうもろこし、ばれいしょ、なたね、綿実、アルファルファ、てん菜、パパイヤ、からしな」
これらを原材料に含む加工食品は、遺伝子組み換えである旨の表示が義務付けられています。
該当する場合は、表示の有無を必ず確認しましょう。
2-2.衛生事項

①アレルゲン
食物アレルギーの原因となる食品は、表示が必要です。
なかでも「えび、かに、くるみ、小麦、そば、卵、乳、落花生」の8品目は特定原材料として、必ず表示しなければなりません。
図解では「卵」「バター(乳)」「小麦」が該当します。
さらに、消費者庁より表示が推奨されているものとして以下20品目があります。
「アーモンド・あわび・いか・いくら・オレンジ・カシューナッツ・キウイ・牛肉・ごま・さけ・さば・大豆・鶏肉・バナナ・豚肉・マカダミアナッツ・もも・やまいも・リンゴ・ゼラチン」
原材料の場合、通常は原材料名に(●●を含む)と記載します。
乳成分が含まれている場合は「乳成分を含む」と記載しますが、「バター」のように省略が可能なものもあります。
また、まとめて表示する場合には、「一部に●●を含む」といった表現を使うこともあります。
例)「一部に卵・乳成分・小麦を含む」
②添加物
添加物は、原材料欄に原材料と区別して記載します。
画像では「/ベーキングパウダー」のように、「/(スラッシュ)」を使って添加物と原材料を分けて記載しています。
記載順は原材料と同様に、使用量の多い順での表示を基本とします。
③期限表示
期限表示は、科学的・合理的な根拠に基づいて年月日で期限を表示します。
(例:2025年6月15日など)
期限表示には以下の2種類があります。
消費期限 | 安全に食べられる期限(傷みやすい食品に使用) |
賞味期限 | おいしく食べられる期限(比較的日持ちする食品に使用) |
④保存方法
保存方法は、未開封の状態で期限を保てる保存条件を記載します。
画像では「直射日光、高温多湿を避けて常温で保存してください」と表示されています。
温度や湿度などを明記する必要があります。
⑤製造所
製造所には、「氏名または製造所の名称」と「所在地」を記載します。
屋号のみの表示は認められていないため、正式な氏名や住所を記載する必要があります。
住所は「大分県大分市弁天2丁目6-29」のようにしっかりと表記しましょう。
また「品質事項」で説明した食品関連事業者と製造所が同じ場合は省略可能です。
2-3.保健事項
①栄養成分

栄養成分表示では、以下の5項目をこの順番で記載します。
・熱量
・タンパク質
・脂質
・炭水化物
・食塩相当量(ナトリウム)
成分量の算出方法は以下のいずれかです。
(1)検査機関で製品を実際に分析する方法
(2)公的な成分データベース等を利用して、原材料から推定する方法
なお、一部のケースでは栄養成分表示が免除されます。
たとえば、
・表示可能面積が30㎠以下の包装
・酒類
・消費税の納税義務が免除されている事業者
などが該当します。
詳しくは以下、消費者庁より解説されていますのでご参照ください。
2-4.記載方法に関するルール
食品表示は記載方法にも明確なルールがあります。
記載方法のルールは以下の4つです。
①日本語で記載すること
②文字の大きさは8ポイント以上
※ただし、表示可能面積が150㎠以下の場合は5.5ポイント以上でも可。
③文字や枠線の色は、背景と十分に対照的な色で、視認性を確保すること
④容器や包装の見やすい位置に表示すること
これらはあくまで基本的なルールであり、食品の種類や記載する内容によっては、さらに細かい規定が設けられている場合もあります。
より詳しい情報は、消費者庁が公開している以下のページをご参照ください。
3.食品表示法に違反するとどうなる?罰則について

ここまで食品表示のルールについて解説しましたが、もし違反した場合はどうなるのでしょうか?
食品表示法に違反したケースは、大きく次の3つに分けて考えられます。
①食品表示基準に則さない表示をした場合
②食品の安全な摂取に重大な影響を及ぼす場合
③原産地(原材料含む)の虚偽表示をした場合
それぞれ詳しく見ていきましょう。
①食品表示基準に則さない表示をした場合
「食品表示基準に則さない表示」とは、たとえば以下のようなケースです。
・栄養成分表示の順序が崩れている、または項目が抜けている
・名称が一般的なものとして記載されていない
このような表示の場合、まずは監督官庁(消費者庁や自治体の保健所など)から是正の指示が行われます。
それでも指示に従わない場合は「措置命令」が出され、その内容が公表されることもあります。
さらに命令に従わない場合は、以下のような罰則が科されます。
個人 | 1年以下の懲役または100万円以下の罰金 |
法人 | 1億円以下の罰金 |
②食品の安全な摂取に重大な影響を及ぼす場合
「食品の安全な摂取に重大な影響を及ぼす場合」とは、たとえば以下のようなケースです。
・特定原材料(アレルゲン)の表示が不適切
・消費期限の表示が誤っている
・加熱が必要な食品に、その旨の記載がない
このような違反は健康被害につながる可能性が高く、処罰が重くなります。
違反者には、食品の回収などの措置が命じられ、以下のような罰則が科されます。
個人 | 2年以下の懲役または200万円以下の罰則 |
法人 | 1億円以下の罰金 |
さらに命令に従わない場合は、以下のように罰則が科される可能性があります。
個人 | 3年以下の懲役または300万円以下の罰金 |
法人 | 3億円以下の罰金 |
③原産地(原材料含む)の虚偽表示がされた場合
「原産地の虚偽表示」とは、たとえば以下のようなケースです。
・複数産地を混ぜたお米を「大分県産こしひかり」のように偽って表示
・外国産のたけのこを「大分産」のような国産と偽って表示
こうした虚偽表示は景品表示法にも関わる場合があり、厳しく処罰されます。
違反者には、食品の回収などの措置が命じられ、以下のような罰則が科されます。
個人 | 2年以下の懲役または200万円以下の罰則 |
法人 | 1億円以下の罰金 |
さらに命令に従わない場合は、以下のような罰則が科される可能性があります。
個人 | 3年以下の懲役または300万円以下の罰金 |
法人 | 3億円以下の罰金 |
が科される可能性があります。
これら①~③はいずれも、監督官庁からの命令内容が公表される可能性があるため、社会的信用を大きく損なうリスクもあります。
なお、ここで解説した罰則は食品表示法に定められていますので、ご確認ください。
4.食品表示は自作できる?それとも専門業者(コンサルタント)に頼むべき?

ここまで食品表示の「ルール」や「罰則」を解説しました。
しかし、いざラベル作成を考えた際に、不安を感じる方も多いのではないでしょうか。
ここからは、
・食品表示ラベル作成の難しい点
・専門業者(コンサルタント)への相談をオススメする場合
・専門業者(コンサルタント)への相談が不要な場合
をそれぞれ解説します。
4-1.食品表示ラベル作成の難しい点

食品表示ラベルの作成は、以下の点が特に難しいといえます。
①食品表示の細かいルールへの対応
②「食品表示法」改正への対応
③原材料やアレルゲン情報などの正確な記載
①食品表示の細かいルールへの対応
食品表示には、記事内で紹介しきれないほど多くの細かいルールがあります。
たとえば「2-2.衛生事項」で解説したアレルゲン。
乳成分を含む場合、基本的には「乳成分を含む」と記載します。
しかし、以下原材料のように、例外的に「乳成分を含む」という表記を省略できる場合もあります。
・バター
・バターオイル
・チーズ
・アイスクリーム
このように食品表示には細かなルールが多く、専門家でなければ把握が難しいのが現実です。
②「食品表示法」改正への対応
食品表示法は2015年に施行されて以降、たびたび改正されています。
これまで行われた、おもな改正は以下のとおりです。
2017年:加工食品の原料原産地表示が義務化
2020年:栄養成分表示が完全義務化
2023年:遺伝子組換表示制度が見直し
法改正のたびに内容を理解・対応する必要がある点も、大きな負担となります。
③原材料やアレルゲン情報などの正確な記載
食品表示ラベルは、原材料やアレルゲン情報などの正確な記載が求められます。
特に注意が必要なのが、以下の点です。
・表示方法の細かいルール(アレルゲンの強調表現など)
・栄養成分表示
・誤解を招く表現の禁止
これらに不備があると、行政指導や販売停止のリスクがあります。
4-2.専門業者やコンサルタントへの相談をオススメする場合

専任の担当者がいない場合は、専門の制作代行業者やコンサルタントへの相談がおすすめです。
特に以下のようなケースでは、専門業者のサポートを受けることでスムーズに対応できます。
・初めてラベルを作成する場合
・多品種の商品がある場合
専門業者を利用することで、食品表示のミスを防ぎつつ、デザインや印刷コストが最適化されます。
4-3.専門業者やコンサルタントへの相談が不要な場合

食品表示の法規制を正しく理解し、適切に対応できる場合は、自社でのラベル制作が可能です。
特に、ラベルプリンターなどの整備が整っている場合は、外部に依頼せずに対応できます。
自社対応のメリットは次のとおりです。
・必要なタイミングで、必要な分量だけ印刷できる
・頻繁にラベルを変更する場合に柔軟に対応できる
・外注コストを抑えられる
食品表示法に対応でき、ラベルの更新頻度が高い場合は、自社でのラベル制作を検討するとよいでしょう。
ただし、「正確さ」と「安心」を重視するなら、専門家のサポートを得るのが確実です。
5.YAKUYAKUは「食品表示」のご相談を受付けています

YAKUYAKUは元食品衛生監視員である、私、野口が大分市にて運営している会社です。
食品衛生監視員としての経験を活かし、飲食業界の皆様が安心して事業を行えるようにサポートいたします。
今回解説した「食品表示」も熟知しており、事業者様のお困りごとを解決します。
全国を対象にした事業者様からのご相談を無料で受付けておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
【お問い合わせ方法】
・ホームページ下部問い合わせフォーム(ContactUs)から
・メールアドレス(matcha-no@odori-co.com)から
・電話でお問い合わせ(電話番号:070-8949-6827)
6.まとめ|食品表示のルールは重要!初めての出品は専門家にお任せを!

今回の記事では、以下のポイントを解説しました。
・食品表示法の基本ルール
・食品表示法の罰則
・ラベル作成を専門業者へ依頼すべきケース
食品表示は消費者の健康にかかわる情報を提供するため、法律に則った正しい表記が必要です。
一方で「細かいルール」や「法改正」があるため、対応が困難です。
「初めてラベルを作成する場合」や「多品種の商品がある場合」は専門業者への相談をおすすめします。