菓子製造業の許可取得への道
- モトヒロ

- 4 時間前
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こんにちは、元保健所職員で薬剤師のモトヒロです。
このブログでは食品の安全性や衛生管理に関する話題を取り上げています。
今回は、「菓子製造業」の営業許可取得を考えている方向けに、保健所への申請手順や施設基準、法的な根拠を丁寧に解説します。手作りスイーツのネット販売や道の駅出品など、個人・小規模事業者の方にも役立つ内容です。

菓子製造業とは?市場の現状と魅力
菓子製造業とは、ケーキ・クッキー・和菓子・チョコレート菓子などの製造を行い、それを販売する事業のことです。近年、手作りスイーツのネット販売(BASE、メルカリShops など)や道の駅・マルシェへの出品が広がり、個人が菓子製造業の許可を取得するケースが急増しています。
国内の菓子市場は約3兆円規模で推移しており、大手メーカーが市場をリードする一方、「地産地消」「無添加」「グルテンフリー」などをコンセプトにした小規模事業者の参入が活発化しています。SNSを活用した個人ブランドが注目を集めています。
許可を規定する法律の概要
菓子製造業の許可は、食品衛生法第55条に基づき、都道府県知事(政令市・特別区長)が許可します。2021年6月の改正食品衛生法施行により、業種区分が見直され、「菓子製造業」は引き続き許可が必要な業種として位置づけられています。
注意点として、「菓子製造業」の許可でカバーされる品目は、焼き菓子・生菓子・和菓子・チョコレート菓子・あめ菓子などが対象です。一方、アイスクリーム類は「アイスクリーム類製造業」、清涼飲料水は「清涼飲料水製造業」と別許可が必要です。製造する品目によって必要な許可が異なる点は、事前に管轄の保健所へ確認することを強くお勧めします。
(2021年の法改正後は、より境界線が難しくなっており、葛バーのような、アイスクリームのような製品が実は菓子製造業でOK等、各自治体の裁量がありますのでご注意ください。)
【飲食店と併設する場合の許可区分について】
カフェや飲食店を併設して菓子を提供したい場合、どの許可が必要かは多くの方が迷うポイントです。令和元年12月27日付の通知(生食発1227第2号「食品衛生法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う関係府省令の制定について」)では、以下のように整理されています。
①菓子製造業の許可を受けた施設で、客が購入した菓子やパンに飲料(注1)を添えて施設内で提供する場合 → 飲食店営業の許可は不要
(注1:飲料の範囲も自治体によって異なる可能性があります。)
②菓子製造業の許可を受けた施設で調理パンを製造する場合 → そうざい製造業または飲食店営業の許可は不要
一方で、同通知では「飲食店営業」の「調理」について、次のように定義されています。
「飲食店営業の対象となる『調理』とは、その場で客に飲食させるか、または短期間のうちに消費されることを前提として、一応摂食しうる状態に近くなった食品を変形・付加・調味などして飲食に最も適するように加工成形することをいう。なお『短期間のうちに消費されることの判断基準』としては、調理した者から消費者に直接販売されるか、または食品表示法上の表示義務が免除される対面販売であることなどが想定される。」
つまり、「その場で客に飲食させる」「対面販売で直接渡す」といった提供形態は飲食店営業の「調理」に該当し得るため、自分の事業形態が上記①②の範囲に収まるのか、それとも飲食店営業の許可が別途必要なのかを慎重に判断する必要があります。同じ「菓子とドリンクをその場で提供する」形態でも、事業の実態によって必要な許可が変わります。自分の形態にあった許可を取得するために、必ず事前に管轄の保健所に相談することを強くお勧めします。

菓子製造業の施設基準
施設基準は各都道府県の条例で定められていますが、共通する主な要件は以下のとおりです。
【製造室の独立・区画】家庭の台所(居住スペース)と製造室は明確に区画されている必要があります。同じ空間での製造はNGです。壁や扉で仕切られた専用の製造スペースが必要です。
【手洗い設備】製造室内に、食品製造専用の手洗い設備(蛇口が自動式またはレバー式)が必要です。洗面所との兼用は認められないケースが多いです。
【床・壁・天井】清掃しやすい素材(タイル・コンクリート・FRP など)で、水が浸透しない構造であること。カーペットや木材のままでは許可が下りません。
【シンク(二槽以上)】原材料の洗浄と器具の洗浄・消毒を分けて行うため、シンクは2槽以上が求められることが多いです(自治体により1槽でも可の場合あり)。
【冷蔵・冷凍設備】原材料や製品の保管に適した温度管理設備が必要です。温度計付きの業務用冷蔵庫が推奨されます。
申請の流れと必要書類
申請から許可証発行までの流れは、大まかに以下のステップです。
①事前相談:施設の図面を持参して管轄の保健所に相談。改修が必要な箇所を事前に把握できます。(事前相談はとても大事です。手書きでもいいので図面を持参して、保健所からアドバイスをもらいましょう。)
②食品衛生責任者の資格取得:食品衛生責任者は各施設に1名必要です。調理師・栄養士・薬剤師などの有資格者か、都道府県知事の指定講習会(1日程度)を受講することで取得できます。
③施設の整備・改修:保健所との事前相談を踏まえ、施設基準を満たす改修を行います。
④申請書類の提出:営業許可申請書、施設の平面図、食品衛生責任者の資格証明書、水質検査成績書(井戸水使用の場合)などを提出します。
⑤保健所による施設検査:申請後、保健所の食品衛生監視員が施設に来て確認検査を行います。基準を満たしていれば許可証が発行されます(通常、申請から2〜3週間程度)。
よくある注意点・落とし穴
元保健所職員として現場で多く見てきた「失敗パターン」をご紹介します。
【自宅キッチンそのままで申請してしまう】最も多いケースです。居住スペースと製造室が一体になっている場合、原則として許可は下りません。その際、保健所からアドバイスをもらい、居住スペースと製造室が空間的に遮断できているような構造に改装しましょう。
賃貸の場合は改修に大家の承諾が必要な点も忘れずに。
【食品表示ラベルの作成を忘れる】許可取得後、販売する際には食品表示法に基づくラベル表示が義務です。名称、原材料名、アレルゲン、消費期限または賞味期限、保存方法、製造者名・住所などの記載が必要です。

おわり
以上が、菓子製造業の許可取得に向けた基本的な解説です。施設基準は自治体によって細かい違いがあるため、必ず管轄の保健所に事前相談することをお勧めします。許可取得の手続きにお困りの方は、ぜひ当事務所にご相談ください。それではまた!!



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